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市街地自動運転(レベル3、4相当)の認知・判断技術の開発
市街地向けの自動運転では車載のセンサ(LiDAR、ミリ波レーダ、カメラ、GPSなど)を用いて周囲の状況に応じた認知・判断を行います。様々な道路環境に対応した自動運転技術を実現するためには車載されたAIによる高度な認知・判断機能に加えて、それを支援する道路・通信設備などのインフラとの連携が必要となります。そこで、高度な自動運転システムを開発して市街地環境での実証実験を実施することでインフラによる支援が必要な状況を明らかにすることを目指しています。
【技術開発概要と成果】
市街地自動運転の認知・判断技術の開発
● 市街地でのLevel4相当の認知・判断技術を開発
- オープンな研究体制で最先端技術を導入
- 市街地道路での公道実証実験を継続的に実施することでインフラ(信号機・白線など)による支援が必要となる状況を明確化
● インフラ協調型自動運転の有効性の評価
- V2I/V2N通信設備による配信情報の効果検証
→信号予定情報・模擬緊急走行車両の配信情報など
● DIVP®仮想環境の有効性の評価
● 実証実験データの提供: 信号認識に悪条件となるシーンの画像データセット
- AD-URABAN Open Image Dataset v1
東京臨海部実証実験におけるV2I/V2N/カメラの認識距離の検証例(テレコムセンター前交差点通過時の事例)
東京臨海部での実証実験の様子
(2019年9月から2022年12月までに244日間、3970kmの自動運転走行を実施)
V2I通信の信号先読み情報を活用したジレンマゾーンの急減速抑制
実証実験を通した自動運転に必要なインフラと認知・判断技術性能の見極め
:V2I/V2N通信設備を有した信号機の活用
● 自律型認識技術による交差点信号機の認識性能評価
- 120m以内の信号灯・矢印灯を99.0%で認識
- 自律型の認識で得られた課題(誤出・未検出)
→逆光・順光・隠蔽・背景同化・夜間・雨天
→ハードウェアの性能限界や道路形状・周辺車両による隠れなどの状況が存在
→特に信号機が1つしかない交差点で不調が発生すると交差点の進入判断が困難
大型トラックによる信号機の遮蔽の様子
逆光により飽和した信号機の様子
東京臨海部実証実験の信号認識における不調シーン例
隠蔽
背景同化
夜間
逆光
● V2I/V2N通信設備による信号情報の効果検証
- 無線通信・セルラー通信による信号情報の配信
→現示状態・先読み情報を取得可能
- 通信による信号情報の有効性
→先読み情報を活用した交差点急減速の抑制
→多重系構成によるロバスト性の向上
→視界の信号情報の把握
● DIVP®仮想環境を活用した認識不調シーンの検証
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信号認識に課題のあるシーンは限定的
→発生頻度の低い課題を実環境で検証するのは困難
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シミュレータを用いた不調シーンの再現
→実環境で発生した課題の検証
→大雨など実証実験では遭遇していないレアシーの評価
シミュレータを活用した不調シーンの再現例
(左:実画像、右:生成画像)
シミュレータで再現した雨天時の走行画像の様子
AD-URABAN Open Image Dataset v1の画像例
(交差点走行で視認性の低下するシーンの画像データセット)
課題
自動運転技術の社会実装には、自動運転技術の安全性を網羅的効率的に評価する枠組みの早期構築が必要となります。
このため実道での評価に加え、仮想環境を用いた評価を行い、どのように安全性の高さを一般社会に対して訴求していくかが重要な課題になると考えます。